別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
迎えた旅行当日、頭上を見上げれば雲一つない青空が広がり、視線を目の前と移せば渡月橋から見える色鮮やかな景色に思わず目を奪われた。

「とても綺麗ですね」

「ああ。心が清らかになるな」

渚さんの言うように空気が澄んできて心が清らかになっていく気がする。立ち止まって写真を撮りながら、互いの手を絡ませて渡月橋周辺にあるお店を散策する。とても心が穏やかだ。

紅葉シーズンということもあり観光客で賑わいをみせている。それでも私が行きたい場所や食べたい物を手にしようと、行列に並んででも叶えようとしてくれる渚さんの優しさが嬉しい。

夕方近くまで寺院や土産屋さんを見て回ったり、京都にちなんだ和スイーツカフェを巡って楽しんだ。日常のデートとはまた違う楽しさがあって新鮮だった。

そして、レンタカーに乗り込み渚さんが運転する車に乗って今日泊まる旅館を目指した。向かった先は、標高五百メートルのところにある隠れ家的な日本旅館だ。ここは渚さんが選んでくれた場所。

さっきまでの賑やかな雰囲気とはまた違い、静かで落ち着いた雰囲気が漂っている。車から降りて渚さんにエスコートされながら重厚な石畳を歩いていると、手入れの行き届いた日本庭園が目に飛び込んできた。

光のイルミネーションと色鮮やかに染まる木々のコラボレーション。幻想的なその光景をでいつまでも見ていたくなり足が止まる。

「食事を終えたら部屋からゆっくり紅葉を堪能しよう」

「はい。すごく楽しみです」

渚さんがふわりと笑い私の手を優しく引き再び歩き出すと、紅葉のトンネルをくぐった先に木の温もりが感じられる和モダンな旅館が見えた。
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