別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「そろそろ一緒に露天風呂に入らないか?」

「い、一緒にですか?」

「嫌か?」

「嫌とかではないんですが」

明るい場所で身体の隅々まで渚さんに見られてしまうなんて恥ずかしすぎる。

旅行に行くと決まったときからこんなシチュエーションがあるかもしれないとは覚悟していたし、お腹が出ないように食事も気を付けて体型の維持も意識していたけれど。

「そんなかわいい反応を見せる凛子もかわいいな」

渚さんがクスッと笑い私の頬を撫でる。

「凛子のすべてが愛おしい。だからありのままの凛子でいてくれ。変に気負ったり意識しなくていい。せっかく一緒に過ごせるのだからこの時間を楽しみたいんだ。だから僕のワガママに付き合ってくれないか?」

そう言われれば悪い気はしない。意を決し私はコクンと頷いた。

そしてテラス席から立ち上がり脱衣所へと向かう。ドキドキと高鳴る鼓動を感じながら服に手をかけたそのとき。

プルルルル──

リビングの机の上に置いてあった携帯の着信音が耳に届いた。

「凛子、電話に出なくていいのか?」

なかなか鳴りやまない着信音を気にして上半身裸の渚さんが私の顔を覗く。

「後でかけ直すので大丈夫で……」

「急用かもしれないから出ておいで?」

「分かりました。すみません」

渚さんに促されてリビングへと向かい、携帯を手に取り相手を確認した。
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