別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
彼の少し後を付いて歩いて行くと、駅近くの駐車場へと連れて行かれた。そこには一台の黒塗りの高級車が停められていて、車内に会長がいると七瀬さんから説明を受けた。
手足が震えているのはきっと、寒さのせいじゃない。押し寄せてくる緊張の波と、なんとも言えない恐怖に私は完全に冷静さを失っていた。
気持ちが落ち着くことのないままドアが開けられて後部座席へと乗り込むと、中にいた人物と目が合った。車内には重苦しい空気が流れる。
私が席に着くと、七瀬さんはドアを閉めてその場を離れた。そのまま運転席に乗り込むこともなく、どうやら渚さんのお父さんと話をする間席を外すように言われていたようだ。
「急に無理なお願いをしてすまなかったね」
先に口を開いたのは、渚さんのお父さんだった。
目元が渚さんにそっくりだ。歳は六十代くらいだろうか。光沢のあるシルクのスーツに身を包み、そこから溢れ出す気品。
でも渚さんのように柔らかな雰囲気は感じられない。どちらかと言えば近寄りがたいようなオーラを漂わせている。そして向けられた目はどこか冷酷にも見えた。
「いえ。初めまして。佐倉凛子と申します。ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません」
声が震える。きっと私の動揺は彼にも伝わってしまっているだろう。
手足が震えているのはきっと、寒さのせいじゃない。押し寄せてくる緊張の波と、なんとも言えない恐怖に私は完全に冷静さを失っていた。
気持ちが落ち着くことのないままドアが開けられて後部座席へと乗り込むと、中にいた人物と目が合った。車内には重苦しい空気が流れる。
私が席に着くと、七瀬さんはドアを閉めてその場を離れた。そのまま運転席に乗り込むこともなく、どうやら渚さんのお父さんと話をする間席を外すように言われていたようだ。
「急に無理なお願いをしてすまなかったね」
先に口を開いたのは、渚さんのお父さんだった。
目元が渚さんにそっくりだ。歳は六十代くらいだろうか。光沢のあるシルクのスーツに身を包み、そこから溢れ出す気品。
でも渚さんのように柔らかな雰囲気は感じられない。どちらかと言えば近寄りがたいようなオーラを漂わせている。そして向けられた目はどこか冷酷にも見えた。
「いえ。初めまして。佐倉凛子と申します。ご挨拶が遅くなってしまい申し訳ありません」
声が震える。きっと私の動揺は彼にも伝わってしまっているだろう。