別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない

渚さんのお父さんから真実を聞いてどのくらい時間が流れただろうか。家に帰る気にはなれなくて、行く当てもなく街を彷徨い歩いていた。さっき聞いたことが嘘ならばどんなにいいだろう。

渚さんと私を別れさせたいがための作り話であってほしい。何度もそう願った。

父に聞いてみようか。渚さんに真相を確かめるべきなんだろうか。頭の中をいろんな想いが駆け巡る。それでも意気地なしの私は、行動に移せずにいた。

──プルルル

と、鞄の中から携帯の着信音が響いた。おもむろに鞄の中を漁り、携帯を手に取り相手を確認する。

「もしもし？」

「凛子？　今、家にいる？　実家から美味しいいちごを貰ったから、凛子のところにも持って行こうと思ったんだけど」

電話の相手は、美紅だった。

「えっと、その……今、仕事帰りで……」

「凛子？　なんかあった？　声が震えてる。大丈夫？」