別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
一生懸命に平静を装ってみたけれど、勘が鋭い美紅にはそれが通用しなかった。すぐに私の異変に気が付いて私を気遣う。

「いろいろあって。ちょっと気持ちが落ちてるだけだから大丈夫……」

「私の前では強がらなくていいから。ひとまず家に来て! 紗良も今日はもう寝てくれたし、話をゆっくり聞けるから」

「でも……」

「でもじゃない。待ってるからね」

そういうと美紅は、一方的に電話を切ってしまった。

「美紅ってば、どこまでも優しいんだから」

ぽつりと呟いた言葉が儚く宙に消えていく。美紅は言い出したら絶対に引かない。

夜中にお邪魔するのは申し訳ないと思いながらも、私はタクシーを捕まえて美紅の家へと向かった。
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