別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「うわぁ~。かわいいケーキがある。あれママがつくったの?」

湊斗が店の玄関からケーキのショーケースを覗き込み、目を輝かせる。

「ケーキを買ったら、ばぁばと一緒に帰ろうね」

母はどうやらケーキで湊斗の意識を私から逸らせる作戦のようだ。

「やーだー」

「ママね。まだお仕事中だから湊斗と遊べないの」

しゃがみ込み湊斗の目を見つめながら優しくそう諭したが、湊斗は首を横にブンブンと振り納得しない。

ここまで駄々をこねるのは珍しい。なにかあったのかと胸がもやもやする。そして湊斗の目が真っ赤に充血していることに気が付いた。やはりなにかあったらしい。

でも今は仕事に集中しなければとケーキを適当に選びそれを母に持たせて、湊斗の手を引かせて家に帰らせようとしたその矢先、

「凛子ちゃんどうした?」

店の中にいた岬オーナーが顔を出した。

「娘がいつもお世話になっております」

母がすかざず岬オーナーに向かって頭を下げた。

「いえいえ。凛子さんにはいつも大変助けていただいてありがたいです」

ふわりと笑い岬オーナーがこちらへと足を進めてくる。
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