別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
そんなある日のこと。

仕事帰り自宅に向かって歩いていると携帯が鳴った。相手は美紅だった。ずっと忙しくしていて、なかなか美紅とも会えない日々が続いていた。

そんな美紅に〟相談があるから今から会えないか〝と言われ、急遽待ち合わせ場所のイタリアンカフェに向かうために方向転換をして歩き出す。

「ここに来るのも久しぶりだなぁ」

向かった先は、元職場の近くにある行きつけのイタリアンカフェ。互いに子育てに仕事に忙しくて、ふたりきりでゆっくり会うのは実に数か月ぶりだ。

いつもは子供たちも一緒だから、ゆっくりご飯を食べたり話すこともできないでいたから。美紅は先に到着しているようだった。店員さんに奥の個室へと案内されて、ドアに手をかけた。

「仕事お疲れさま。久しぶりだね」

美紅が優しい笑顔で迎えてくれた。美紅の姿を見て心が高揚していく。

「ホントに久しぶりだよね。電話ではちょくちょく話してはいたけど」

「まぁね。お互い最近はバタバタだったもんね。いきなり呼び出してごめんね」

「全然いいけど、相談ってなに?」

「えっと、その……」

美紅は、なんだか落ち着きがない様子だ。相談事というのはいったいなんなのだろう。そんなに重大なものなのだろうか。こっちまで緊張してきたじゃない。
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