別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
渚さんは私のことが憎いでしょう? 

私がいなければ、渚さんのお母様はもっと長く生きることができたかもしれない。

頭にはそんな想いが浮かぶが、それを口にはできない。

すべてが壊れないようにするために、あの一件は墓場まで持っていくと決別を誓ったのだから。

「父にあのとき母の件を聞いて別れるように言われたんだろう? 急に俺の前からいなくなったのもそれが原因なんだよな?」

「……っ!?」

大きく目を見開く。どうして渚さんがそのことを知ってるの?

「すべて聞いたんだ」

「え?」

まさか。私とのやりとりを渚さんのお父さんは隠し通したかったはずだ。

それを渚さんに話すわけがない。
< 88 / 111 >

この作品をシェア

pagetop