別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
でも知っていたならば、なにかしらのアクションを起こしていたはず。渚さんの将来を考えれば、私とお腹の子の存在は邪魔だったはずだ。お腹の子を堕ろせとか、もしくは私から湊斗を取り上げるとか、黙っているはずがない。
頭をグルグルと巡るそんな疑問はすぐに解けることになった。
渚さんと別れたあとも渚さんのお父さんは、私たちが接触を持たないか七瀬さんに見張らせていたそうだ。だから、私が妊娠したことにも七瀬さんは気づいたらしい。それでも、それを渚さんのお父さんに報告しなかった。
ずっと家族のように渚さんに接してきた七瀬さんは、渚さんの幸せを誰よりも願っていた。将来の為とはいえ、私と引き離すことが本当に渚さんの幸せなのか、ずっと思い悩んでいたらしい。
会長秘書として仕事を全うしければいけないとは分かっていたが、自分がその話をしてしまえば、会長がどんな行動に出るか想像ができたのだろう。
彼もまた、渚さんのお父さんと渚さんの間で葛藤しながら苦しんでいたのだ。悪化していく親子関係に、どうすることもできない自分の歯がゆさ。七瀬さんは会社を辞める覚悟で、渚さんにすべてを話したそうだ。
そしてすべてを知ったうえで渚さんはこうやって私に会いに来てくれた。
「凛子、今まで本当に辛い想いをさせてすまなかった」
「渚さん……」
「もう一度だけチャンスをくれないか。これからの人生を三人で歩んで行きたい」
渚さんが真っ直ぐに私を見つめながら、ギュッと手を握った。
止まっていた時間が動きだす。
それでも──。
頭をグルグルと巡るそんな疑問はすぐに解けることになった。
渚さんと別れたあとも渚さんのお父さんは、私たちが接触を持たないか七瀬さんに見張らせていたそうだ。だから、私が妊娠したことにも七瀬さんは気づいたらしい。それでも、それを渚さんのお父さんに報告しなかった。
ずっと家族のように渚さんに接してきた七瀬さんは、渚さんの幸せを誰よりも願っていた。将来の為とはいえ、私と引き離すことが本当に渚さんの幸せなのか、ずっと思い悩んでいたらしい。
会長秘書として仕事を全うしければいけないとは分かっていたが、自分がその話をしてしまえば、会長がどんな行動に出るか想像ができたのだろう。
彼もまた、渚さんのお父さんと渚さんの間で葛藤しながら苦しんでいたのだ。悪化していく親子関係に、どうすることもできない自分の歯がゆさ。七瀬さんは会社を辞める覚悟で、渚さんにすべてを話したそうだ。
そしてすべてを知ったうえで渚さんはこうやって私に会いに来てくれた。
「凛子、今まで本当に辛い想いをさせてすまなかった」
「渚さん……」
「もう一度だけチャンスをくれないか。これからの人生を三人で歩んで行きたい」
渚さんが真っ直ぐに私を見つめながら、ギュッと手を握った。
止まっていた時間が動きだす。
それでも──。