別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
彼の想いを受け入れることができない。
心に引っかかる渚さんのお父さんの言葉。渚さんは私たち親子のことをよくは思っていなかったと言っていた。トラウマは簡単には消えない。
「渚さんは私や父をよくは思っていなかったんですよね? 私がそばにいると渚さんは苦しくないんですか? それでも子供のことを知って責任を取ろうとそんな風に言ってくれているならばお気遣いは結構です。それに渚さんのお父さんの気持ちを考えると……」
「父が酷いことを言って傷つけたことは、本当に申し訳ないと思っている。俺は、凛子や佐倉先生を恨んだりはしていない。むしろ佐倉先生には感謝しているんだ」
「感謝……ですか?」
意外すぎる言葉に私は目を丸くした。
「ああ。佐倉先生に巡り遭えたから、宣告された余命を超えて母は生きることができたのだと思っている。それに弁護士になってたくさんの医療訴訟に関わるようになって、佐倉先生がいかに誠実で患者想いの先生だったのか知ることができたから。先生には感謝しかない」
「渚さん……」
「あの日も佐倉先生はちゃんと他の先生に引き継ぎをしておられたし、佐倉先生にはなんの落ち度もないんだ。ただ父の気持ちの整理がつかないだけの話だ。それを凛子の所為にするのは、間違っている。それを父も頭では分かってはいるのだと思う。必ず父を説得する。もう二度と凛子のことを傷つけたりはしない。だから俺のことを信じてほしい」
向けられた真剣なまなざしを前に心が揺れる。もう二度と会うことはないと思っていた。湊斗のこともひとりで育てるつもりでいた。
それなのに。
ここですぐに、はっきりと拒絶できないのは、なにかを期待してるからなんだろうか。
心に引っかかる渚さんのお父さんの言葉。渚さんは私たち親子のことをよくは思っていなかったと言っていた。トラウマは簡単には消えない。
「渚さんは私や父をよくは思っていなかったんですよね? 私がそばにいると渚さんは苦しくないんですか? それでも子供のことを知って責任を取ろうとそんな風に言ってくれているならばお気遣いは結構です。それに渚さんのお父さんの気持ちを考えると……」
「父が酷いことを言って傷つけたことは、本当に申し訳ないと思っている。俺は、凛子や佐倉先生を恨んだりはしていない。むしろ佐倉先生には感謝しているんだ」
「感謝……ですか?」
意外すぎる言葉に私は目を丸くした。
「ああ。佐倉先生に巡り遭えたから、宣告された余命を超えて母は生きることができたのだと思っている。それに弁護士になってたくさんの医療訴訟に関わるようになって、佐倉先生がいかに誠実で患者想いの先生だったのか知ることができたから。先生には感謝しかない」
「渚さん……」
「あの日も佐倉先生はちゃんと他の先生に引き継ぎをしておられたし、佐倉先生にはなんの落ち度もないんだ。ただ父の気持ちの整理がつかないだけの話だ。それを凛子の所為にするのは、間違っている。それを父も頭では分かってはいるのだと思う。必ず父を説得する。もう二度と凛子のことを傷つけたりはしない。だから俺のことを信じてほしい」
向けられた真剣なまなざしを前に心が揺れる。もう二度と会うことはないと思っていた。湊斗のこともひとりで育てるつもりでいた。
それなのに。
ここですぐに、はっきりと拒絶できないのは、なにかを期待してるからなんだろうか。