別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「家族?」

「はい。湊斗は僕と凛子の子供ですから」

「……そうだったんですか。だったらどうして凛子ちゃんひとりに苦労を背負わせてきたんですか? 少なくともこの三年、凛子ちゃんのそばにいたのは俺です」

こちら側からだと岬オーナーと渚さんがどんな顔をしているか分からない。だけど、岬オーナーのその言葉に、私を抱きしめる渚さんの腕に力が入ったのが分かった。

渚さんはなにも言い返さず、私の手を引いて歩き出した。渚さんが今なにを思いなにを考えているか分からない。それでもその表情には、悔しさと切なさが滲んでいるように思えた。

「凛子、すまない」

手を引かれて連れていかれたのは、駅の立体駐車場に停められた渚さんの車の中だった。

「岬さんの言うとおりだよな」

「渚さん……」

「凛子に会いたい気持ちが抑えられなくて会いに来てみたら、ああいう現場に出くわして声をかけずにはいられなかった。嫉妬心が抑えられなくてかっこ悪いな」

「……」

なんと言葉をかけるのが正解なんだろう。
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