別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「遅れてしまってすみません。湊斗がぐずってしまって」

「いいや。かまわないよ」

助手席に乗り込むと、渚さんがいつものように柔らかく微笑み迎えてくれた。私がシートベルトをしたのを確認すると、渚さんが車を走らせ始めた。実家が近づくにつれて緊張が増していく。

渚さんはいたって普通に見える。緊張していないんだろうか。

「どうした?」

ちらちらと様子を窺っていたことに気付いていたらしい。

「……もしかしたら父がキツイことをいうかもしれません。あのやっぱりすべてを話すべきだと思うんです」

「大丈夫だ。すべてを受け入れる。今日は佐倉先生に殴られる覚悟できたからな。先生にとって大事な娘と孫に苦労をさせてしまった事実はどうやっても消えない。だからこれからその分ふたりを幸せにしていきたい。今日はその第一歩だ」

ふわりと笑う彼がギュッと私の手を握った。
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