無名ファイル1
「ほら、麗菜殿…起きてくだせぇ!!」
「ん”~。」
私がどんなに揺すっても無駄みたいだ。
諦めてエミリアに目配せすると、
いつになく怖い顔で窓の外を見ていた。
「…エミリア、どうしたの…?」
「いえ、大丈夫デース。」
エミリアは口元を吊り上げて微笑んだ。
いつも騒々しいエミリアの冷静な顔は、
結構迫力あるんだよなぁ…美人だし。
「それよりも二人共酷いデース!!
夏休み、一度も遊ばなかったデース!
せっかくの高校の夏休みなのにぃ!」
エミリアは私の手をガシッと掴んで、
ブンブンと揺さぶって嘆いた。
「あはは、それはごめん…」
「う”~煩い。」
懐かしい空気感…数か月振りだもんね。
私も夏休み中、結構忙しかったなぁ…。
「Oh…魅香には彼氏がいたデース。」
裏切者め~♪と私を小突くエミリア。
「あー、夏休みは…遊ぶよね、普通は」
彼が忙しいのは知っていたけど…。
少しは…我儘言っても良かったのかな。
「うわ、魅香…どうしましたか…?
日本の夏よりジメッとしてるデース。」
エミリアに頭をわしゃわしゃ撫でられ、
私は自分の影に視線を落とした。