無名ファイル1
「なっ…で、アカウ…ント、
消せなっ、声…っ、潰すの…?」
「あははっ、何言ってるんだい?
アカウント消しても別の所で歌ったら、
意味が無いだろう?だから元を断つ。」
温度のない声で感情なく言い放つ。
私は必死にサドの腕に爪を立てた…。
もはや声は出せないし、息もできない。
朦朧とする…そんな中、背後で扉の音。
「失礼します、サド先生?」
「ひゅっ、ゲホッ…ケホケホッ!!」
気管が解放され一気に酸素が体を廻る。
振り向くと担任のチビゴリラ先生の姿。
「せんせっ…ケホケホッ!!」
「月乃どうした!?大丈夫かぁ??」
先生の豪快な声に私は心底安堵した…。
サドは無害そうな笑みに戻っている。
「大丈夫です」
「埃を吸ってしまったみたいですね。
話は以上です、帰宅していいですよ。」
チビゴリラ先生は少し心配そうに、
背中を擦ってくれる…温かい手だった。
「夏夜にサド先生と月乃を二人きりに
するのは如何なものかと言われてな。」
「僕が若造だからですかねぇ?
すみません、肝に命じておきます。」
あ、夏夜が先生を呼んでくれたんだ…。
「さようなら、先生」