無名ファイル1
数年前はあんなに恐ろしかったのに。
180㎝を優に超える身長の男の背中が、
あんなに小さく…惨めに見えるとはね。
「それでも…腰は抜けるのか…」
震える冷たい指先を包み込む様に握る。
…やっとトラウマから解放される。
何年も怯えたあの姿はもう怖くない。
あぁ、早く貴方に会いたい…。
大好きなあの人笑顔が脳裏によぎる。
「なんだ…もう答え出てるじゃん」
未だ震える脚に鞭を打ち、立ち上がる。
教室を目指して走り出した。
『ガチャッ!!』
「わっ!…魅香、何してたんデス?」
参考書とノートを抱き締めるエミリア。
何食わぬ顔で笑ってるけど動揺してる。
全然目が合わないもん…。
「先生を絞めてきたの」
「…Huh??」
目を真ん丸にして…聞き間違えたと、
思ってるんだろうなぁ…。
「いや…なんでもない、丁度良かった。
やっと私の気持ちに答えが出たんだ…」
「答え…考えてくれたんデスね!!」
その声はほんの少し震えていた。
「三日も待たせてごめんね」
「いえ…真剣に考えてくださり、
ありがとうございます…魅香。
受け止める準備は出来ています。」