無名ファイル1
エミリアの唾を呑む音がした…。
決して近い距離じゃないのに。
「スゥー…ハァーッ…どうぞ。」
大きな瞳とバチッと目が合った…。
廊下の窓から差し込む熱を持った光。
首筋を伝って流れる汗の滴…。
バックから出した箱の時を刻む音。
「エミリア、ごめんなさい。
あなたの気持ちは受け取れない。」
エミリアはやっぱりねといった様子で、
穏やかに微笑むがポロポロと大粒の、
涙を溢した。こんなに近くにいるのに。
私には拭ってあげれない涙…。
「ワタクシ…魅香を好きになって、
本当に良かったデース!!幸せデス。
…これからもワタクシと友達として、
仲良くしていただけないでしょうか?」
そっと差し出された白く小さな手。
指先は相変わらず震えている…。
「勿論…こちらこそっ…よろしく!!」
手をそっと握り返すとほんの少し、
温かく…柔らかかった。
「夏夜君は図書室デース!」
ドキリと心臓が跳ねる。
「魅香の考える事はお見通しデース!
魅香が気持ちを伝えられるように、
良い知らせを聞けることを願います。」
「…ありがとう!」
温かい言葉に背を向け、走り出した。