無名ファイル1
Part4.駄犬の首輪
私はバッグからネックレスを出し、
はい!と、蛍の手のひらに乗せる…。
「え、何…返品不可ですが?」
凄い真っ青な顔でボソッと抗議された。
「ふふっ…違う、首につけてよ!」
「あぁ、良いよ、こっち寄って。」
丁寧な手つきでネックレスをつける彼。
…我ながら大胆なお願いをしたなと、
彼の香水の匂いに気づいた時に思った。
「あれ、香水なんてつけてた?」
「この間、ファンに貰った。妬いた?」
蛍がいたずらっ子のように笑う。
「うん…ちょっと妬いた」
「ふっ、分かった。もうつけない。
あ、俺もネックレスつけて…魅香。」
私にネックレスを渡した蛍が、
ほんの少し顔を近づける。
「これこそ首輪みたいだね」
「ピアスとは違っていつでも外せる。
まぁ…もう二度と外させないけど。」
私の首元のネックレスを指先で、
クイッと引っ張ってにやりと笑う。
「今日の服、ネックレスが映える。」
「褒めてくれてありがとう、嬉しい…」
流石、百合ネェセレクト…と感心した。
「あと…身の上話をする覚悟を、
してきたのですが…聞きます?」
「…聞く。今度は待つよ、話して?」