無名ファイル1
ー四年前ー
中学生受験をする前までは平凡に、
…音楽一家の次女として普通に、
オーストリアで過ごしていた。
姉との仲も良好。今思えば少々、
いや、だいぶシスコンを拗らせてた。
そんな最中、サドが我が家を訪ねた。
姉はまだサドに片思いしてたし、
私はそれを良く思っていなかった。
「日本で音楽学校に通わないかい?
僕が受け持つクラスがあるんだよ。」
私はこの誘いをラッキーだと思った。
怪しい雰囲気のサドが姉ではなく、
私に何か罠を仕掛けにきている…。
恋で盲目になった姉は引っ掛かれど、
私は絶対コイツの罠なんかに屈しない。
私が誘いに乗って姉に近づかぬように、
監視してやろう…絶対的自信があった。
「いいですよ、日本の学校楽しみです」
しかし誘いに乗ること自体が罠だった。
…最初から狙いは私だったんだ。
サドが帰宅して姉に部屋に呼ばれた。
私は姉の安全が保証されたことに、
安心して姉の気持ちを忘れていた…。
これが唯一の誤算だった…。
「最低…貴方を信じていたのに!!」
部屋に入った瞬間にビンタされた。
熱を持つ頬を押さえ、後悔した。