無名ファイル1
そんな日々に転機が訪れたのは、
中学三年の秋。姉が日本に用事があり、
私の過ごす家に泊まることになった日。
久々に顔を合わせた姉は昔よりも、
大人びていて更に美しくなっていた…。
「サドさん、一体どういうことですか?
魅香がこんなにも痩せ細っているのに、
何故、平気な顔をしているんですか?」
姉は私を見るや否や恐ろしい顔をして、
サドに殴りかかる勢いで詰め寄った…。
サドの胸ぐらを掴んだ姉の手は、
怒りでブルブルと震えていた。
「駄犬の聞き分けが良くなるように、
三年かけて根気強く躾をしたんだよ。」
胸ぐらを掴まれてもただ微笑むサド…。
「彩音ちゃんが言ったんでしょう?
妹を可愛がってあげてくださいって。
だから丹精込めて躾けたんだよ。
可愛い…僕のわんちゃッンブッ!?」
スパーン!!とド派手なビンタ。
姉は意外と手が出るタイプだ…。
「もう結構です、妹は引き取ります。
細かい話は後日追って連絡します。」
私にパスポートだけ取りに命じると、
それだけを自分のバッグに突っ込み、
私の手を引いて家を飛び出した…。
私はそんな状況を驚きもしなかった。