無名ファイル1

「明日、すぐに帰国しましょう。
このままあの人といたら危険だわ。」

私は姉にどう言葉をかけるべきか、

ずっと分からずに姉の後を歩いた。

外は煩いくらいに賑やかで、

様々な音に溢れかえっていた…。

日本でほぼ外出はしていない。

したとしても車での移動ばかりで、

コンクリートをちゃんと歩くのは、

久々だとぼんやり思った。

「…魅香、ごめんなさい。
私が酷い言葉で突き放したから、
弱音を吐けなかったんでしょう?
…ごめんなさい、最低な姉ね。」

首を横に振ることしか出来なかった。

相手への言葉をいくら探しても、

私からの言葉は見つからなかった。

結局その日は姉とホテルで一泊。

私は姉と一言も言葉を交わせなかった。

あれから数日は帰国してからも、

姉とは一言も話せなかった。

そして二度目の転機の日がやってきた。

「魅香、気晴らしにライブ来ない?
屋内ライブだから音も派手で素敵よ!」

帰国して一週間程経った日だった。

私は小さく首を縦に振った。

凄く嬉しそうに姉が笑ってくれた…。

私はそれだけでも心が軽くなった。

ライブを見に行くのは初めてだった。
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