無名ファイル1
『次は”月光の恋文”を上映致します。』
『ブーッ』
体育館にブザーの音が響き渡る…。
ざわついていた客席が静まり返った。
暗い体育館…静かに幕が開いてゆく…。
薄暗い…淡い照明が私を照らした。
「月が照らす噴水の水面
クラシックが響くテラス
バラの花咲き乱れる庭、
静寂の中響くmusic.…」
私の歌声から始まったこの物語、
中盤までは滞りなく進んでいった。
しかし感動のラストシーンの前、
私も蛍も早着替えをした…。
エミリア達が演技している数分で。
しかし着替えたドレスには、
ざっくりと切込みが入っていた。
昨日までは平気だったのに。
はぁ!?と周囲は唖然とする。
もう感動どころではない。
仕方なく着替えるのは諦め、
当初のドレスを着ることにした。
「あぁ、月下の歌姫…。
俺は貴方に再び会うために…」
あぁ、もう台詞が聞こえない…。
背中のチャックが落ちてきてる!!
何とか形だけでも着たはいいけれど、
ホックをつける暇はなかった。
「貴方の活躍は耳にしておりました。
私も…会うことができて嬉しいです」
冷や汗が止まらない…。