無名ファイル1

「成長しましたね…木の陰から、
私を覗き見ていた時の面影はなく、
魅力的になられました…」

「覚えていらしたのですか…?」

蛍は私にそっと近づいて手を取った。

「えぇ、ずっと再会を心待ちに、
日々を過ごしておりました…」

「感無量です…貴方をこの腕で、
抱いてもよろしいですか?」

え!?そ、そんな台詞…

「えぇ、どうぞ」

背中に回された手が背筋を撫でる。

ひぁ、今…チャック上げてくれた!?

「夢のようです…貴方にこうして、
触れられる日がくるとは…。」

熱っぽい視線が私を真っ直ぐ捉える。

「一度でいいのです…貴方の唇を、
愛しい唇を俺にくださりませんか?」

「ふふっ、良いですよ」

触れるように…そっとキスをされる。

「本当に…一度でいいのですか?」

「いえ」

今度は喰われてしまいそうな程、

熱く、焦がれる…溶けるようなキス。

「貴方に…伝えたいことがあります、
俺の心の中に閉じ込めていた感情。」

「…奇遇ですね、私もですよ。
全てが美しいものではありません、
汚い愛も…醜い愛も…溢れそうです」

蛍がクスリと笑う。

「奇遇ですね、俺もです。」
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