無名ファイル1

私と蛍は出店をまわった。

フランクフルト、ポップコーン…。

「フルーツ飴、美味しい!!」

甘い飴に包まれた甘酸っぱい苺。

最初はそのまま食べたほうが、

美味しいと思ってたけど…。

「一口頂戴?」

「どーぞ!」

なんか凄い青春してるなぁ~。

数年前の私が見たら卒倒するわ。

飴にコーティングされた巨峰…。

両手が塞がった蛍の口元に差し出す。

「美味い…俺も買えばよかった。」

「ポップコーン少し頂戴!」

程よい塩気に軽い口当たり…。

「他に店見に行くか?」

パイナップルを口に放って頷いた。

『世にも恐ろしいお化け屋敷、
そこのカップルさん…如何?』

「ひっ…」

血糊のついた手で手招く案内人。

扉の向こうは真っ暗で禍々しい…。

「行く?」

「いや、間に合ってます!」

ササッと通り過ぎようとすると、

青白いメイクをした顔が、

ぬぅっと近づいてきた…。

『そんな、遠慮なさらず…。』

さぁ!さぁ!と背中を押され、

暗闇の中に放り込まれてしまった。

『ガラガラッ…ピシャン!!』

無情にも閉ざされた扉…足が竦む。

悲鳴が遠くで聞こえた…。
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