無名ファイル1
約束の時間…家のインターホンを、
押すタイミングに悩んでいた…。
「スゥーッ…よし」
ボタンに指が触れた瞬間、
後ろから人影が被さった…。
「うちに何か?」
「ヒェッ!お見舞いに参りました!」
誰かと思えば、蛍のお母様!!
今日も美しく着物を着こなし、
上品に立っていた…正に立てば芍薬。
「あら、貴方は蛍の…。」
「ご挨拶遅れました…現在蛍さんと、
お付き合いさせていただいています。
月乃魅香と申します…」
着付け教室の先生ってことは、
やはり礼儀にも厳しいのだろう。
「ふふっ、そう蛍の…大切な人…。
そんなに緊張なさらないで!!
私は蛍の母です、お入りください。」
第一印象よりも柔らかい人だった…。
「お邪魔いたします」
「あ、魅香さん!こちらへどうぞ!」
華美ちゃんはいたずらっ子のように、
楽しそうに笑った。
「お兄ちゃんは魅香さんが来ること、
知らないので反応が楽しみです!」
「…怒らないかな?」
私の言葉に鼻で笑う華美ちゃん。
「もし怒られたら心配だったって、
本当のこと言えば大丈夫ですよ!
てか、ドタキャンするのが悪いです!」