無名ファイル1
『コンコン…』
「…返事がありませんね。
寝てるのかもしれないです。」
『ガチャッ』
容赦なくドアを開けた華美ちゃん。
ノックした意味…あ、寝てる。
「そういえば、プリンどうぞ!
今日は少し顔を見に来ただけだし、
もうお暇するね…本人の許可無しに、
寝顔見るのは…申し訳ないもん」
眉間に皺を寄せて目を閉じる蛍。
紅い頬にそっと手の甲で触れると、
触れた所からじんわりと熱が伝わる。
「熱…高いね」
「今日のために仕事を頑張ってて、
熱が出たのが不憫だったんです…。
お見舞いありがとうございます!」
やっぱり蛍には私…というか、
彼女という存在は重いんじゃないか。
真面目な蛍のことだ…これからも、
私と過ごすために無理をするかも。
「…私、蛍の負担になってないかな」
自然に口から零れだしていた。
「そんなわけ無いじゃないですか!!」
私は華美ちゃんの大きな声に驚いた…。
こんな大きな声を出せる子だったんだ。
「あっ…急に大きな声ですみません。
…でも、絶対に負担じゃありません!
魅香さんはお兄ちゃんの原動力で、
心の支えで…大切な人ですから!!」