無名ファイル1
『えぇ、誘い受けたの!?』
「うん、どうせ暇だから」
電話口の相手は大きな溜息をつく。
「えぇ…即決?」
「うん」
勿論、相手は噂の黒崎麗菜だ…。
蛍との電話の後すぐに着信がきた。
「あ、木彫りのお面でも作る?
配信の時に着けるの…どうよ?」
能面とおかめどっちが良いかな。
「そうね、顔を隠せば炎上しても、
そんなに困ることもないかも。」
なんて物騒なことをボソッと呟き、
やっと決意が固まったようだった。
「怜治に連絡してくるわ。」
「うん、いってらっしゃい!」
こうして生放送配信の準備は、
着々と進んでいった。
もう今年も終わるんだなぁと、
ガラにもなく感傷に浸ってしまった。
結局お面は前日に二人で彫った。
麗菜が白い狐、私が黒い狐。
私は手先が不器用すぎて狐の片耳が、
ポロっといってしまったけど、
接着剤の力で事なきを得た。
…いや!だから黒に塗った訳では…。
衣装は着物を狐の雰囲気に合わせて、
華美ちゃんが着付けてくれるらしい。
本当になんていい子なんだろう…!
髪もやってくれるって言っていたし、
今からかなり楽しみだ♪