無名ファイル1
『ブゥォォォオッ!!!』
華美ちゃんの細く柔らかい指が、
私の髪を丁寧に撫でるように梳く。
「長くて綺麗ですね…一本一本が、
糸みたいに艶々してて美術品みたい。」
「美術品…?」
あぁ、私は美術の成績悪かったし、
美的センスは無いから何も言えないわ。
「で、ソファーに座ってこっちを、
じっと見てる蛍はどうしたんだろう?
眠かったんじゃないの…?」
「あぁ…気にしなくて大丈夫ですよ。
お兄ちゃんは髪を乾かすことを口実に、
綺麗な髪に触れる私に嫉妬中です。」
華美ちゃんはドライヤーを止め、
櫛で丁寧に梳かし始めた。
「完成です!」
「ありがとう!!」
誇らしげに笑う華美ちゃん…可愛い。
寝る準備が整った時には既に二時。
まずい、華美ちゃんが夜更かしで、
体調を崩しでもしたら可哀想だ!!
「華美ちゃん、早く寝よう!!
睡眠不足は体に良くないから!」
私は何処で寝たらいい?と聞くと、
華美ちゃんはニヤリと笑った。
「魅香さんはお兄ちゃんと、
仲良く寝ると良いですよ~!!」
「ふぁっ!?」
「…は?ちょ、おい!!」
蛍が勢いよくソファーを立った。