無名ファイル1
「しかも名前入れてくれたのか。」
蛍に送ったのは紺色の万年筆。
ゴールドで”蛍”と彫ってもらった。
「そう、”蛍”って入れてもらった!
んー?私のは”Moonlight Diva”?」
…月光の歌姫?赤色にゴールドで、
エレガントな雰囲気が漂っていた。
「私ね、この万年筆を口実に、
瓶のインク買いに行くデートを、
誘うつもりだったんだよ…」
「奇遇だな、明日は空いてるか?
俺は仕事も無くて一日オフだ。」
蛍のお誘いが嬉しくて、
次は熱出さないでよ?なんて、
少し意地悪を言ってみたり。
「じゃあ、もう寝ないとな。」
「うん、そうだね!!」
私達はやっと布団に潜り込んだ。
「うわ、待って蛍の足…超冷たい!
末端冷え性の女子の足先じゃん!!
大丈夫?ちゃんと血液通ってる??」
「魅香が温かいんだろう?子供体温。」
蛍が手で私の頬を包むように触れる。
先程まで眠くてポカポカだった手は、
目が覚めるのと比例して冷めたようだ。
「ひぇッ!!えぇ、保冷剤?」
「いや、むしろ湯たんぽか?」
そんなしょうもない口論の末、
二人してスヤスヤと眠ってしまった。