無名ファイル1
「あら、おはよう。体調は平気そうね。」
学校に登校してすぐに麗菜ちゃんの席に、
ズイッと詰め寄った…。
「どうだった?」
「格好良かった!!」
麗菜ちゃんは少し困ったような顔をして、
『Devilish Kiss.』の写真集を差し出した。
「え、貸してくれるの?」
「夏夜君の事よく知った方が良いわ。」
意味深な言い分にどういう意味?と問う。
麗菜ちゃんはあたしをじっと見つめた。
「彼らにはファンがいる…。
私が最近カフェに近づかなかったのは、
ファンの嫌がらせがあったから。」
近くにいるってそういうことなのよ…と、
麗菜ちゃんはあたしにエプロンを見せた。
「でも決めた、近づけるとこまで近づく。
カフェで働くと決めてファンに気持ちが、
負けることはないと自分に誓ったから。」
…強くなったね、麗菜ちゃん。
昔は病気がちで霧島君と話せなくて、
遠くから目が合うだけで赤面してたのに。
今は真っ直ぐ自分の気持ちに向かってる。
「距離を置くも縮めるも自分次第。」
窓から吹き抜ける風が簪の月を揺らす。
「そう…だね。」
ケイちゃん…今頃なにしてるかな。