無名ファイル1
改札を抜けて階段を下りると丁度電車が
目の前で停車した。通勤ラッシュ前は、
人も少ない為ドアに挟まれそうになったり
臭いおっさんの臭いに悩むこともない。
朝からストレスとか最悪だもんねー!
あたしは吊革に捕まるとホッと息を吐く。
ふわぁ…やっば、くっそ眠いんだけど。
ほら、目の前に座ってるメガネの男子も
眠そうに船をこいでる…眠いよね、共感。
窓から差し込む朝日に照らされて、
男子の綺麗な黒髪がキラキラと煌めく。
そういえば家のリンスが残り少ないな…。
ぼんやりと家の在庫に思いを馳せていた。
「…んっ…」
え!?…ぐぅ、い、今…唸った…かわっ。
男子は眠そうな目を擦りながら辺りを
キョロキョロと見渡しハッと息を飲んだ。
あ、乗り過ごしちゃったのかなー?
その時、丁度電車が駅に停車する…。
男子は血の気の引いた顔で一目散に、
電車を下りて行った…。
「ふふっ、………んにゃ"っ!?!?」
やっば!あの子生徒手帳落としてった!!
あたしは男子を追いかけて下車した。
電車のドアが閉まるのを背中で感じる。
下りてから、あぁ…仕舞ったと思った。