無名ファイル1
「魅香ちゃん!!」
大きな声に呼ばれてハッと目を覚ます。
目の前には覆いかぶさるような体制で、
あたしを覗き込む汗だくの夏夜の姿。
眼鏡つけてない…見えるのかな?
「夏…夜…?」
あたしは夏夜の頬に手を伸ばして、
彼の汗を拭った。
「ッ…マジで焦った…。」
夏夜はあたしの無事を確認すると、
安心したようにあたしを起こして、
ぎゅっと包み込む様に抱きしめた…。
そうだ…あたし倉庫に…!!
やっと自分の置かれていた状況を、
思い出してゾッとする。
「助けてくれてありがと…」
危うく白骨化するとこだったー!と、
冗談をかまそうとした時だ…。
目の前で彼のネックレスが音を立てた。
見たことのあるデザイン…。
チェーンに吊るされている小さな指輪。
「それ…」
「どこか痛むか!?」
いや痛いよ、でも違うそうじゃなくて。
あたしは恐る恐る言葉を紡いだ…。
「ケイ…ちゃん?」
間違いない、ムーンストーンの指輪。
あたしの声にサァッと青ざめた夏夜。
その反応で疑いが確信に変わる。
「なんで言ってくれなかったの!?」
倉庫は静寂に包まれた…。