無名ファイル1
「もう!なんで二人と仲良くしないの!」
「俺だけに言われても…というか、
俺も物申したいことがあるんだけど?」
いつの間にか行き先の主導権を、
握られていたあたしは蛍に手を引かれ、
赤字で『生徒立ち入り禁止』という紙が、
貼ってある扉の前までやってきた。
「え、何するの?」
『カチャカチャ…カチャ…カチャン。』
「はぁ!?」
なんとこの輩扉を開けちまったのだ。
…随分と慣れた様子の手つきで…。
「…あんたもしかして常習犯?」
「さぁね、で、話の続きだけど。」
私を扉の向こうにポイッと放ると、
カチャンと扉の鍵を閉めた。
湿っぽい風が吹く…微かに雨の匂い。
あたしは吸い込まれる様に格子に、
手をかける…あ、遠くの方に雨雲。
「さて魅香チャン。あんなペラペラと、
昔話を他人にされると困るんだけど。」
あたしを囲うように格子に手をつく蛍。
視界に入る蛍の大きな手に胸が騒ぐ。
「それは…ごめん…なさい。」
蛍は私の首に顔をうずめてフッと笑った。
息がかかるたびに腰がびくりと脈打つ。
「お喋りな魅香チャンにはお仕置き。」
あたしは息を呑んだ。