無名ファイル1
「今週の日曜、お前の時間俺に頂戴?」
耳元で囁くように紡がれたその言葉。
「…いいけど…何するの?」
「遊園地のチケット貰ったんだ。
俺がトモダチとしてエスコートする。
如何ですか、お姫様。」
夏夜は手を取って指先にキスを落とす。
…懐かしい所作。夏夜がやると、
本当の王子様みたいだ…。
「喜んでお受けいたします。」
お仕置きって言ったのに…結局ご褒美。
は!?そうか、二人で遊園地からの、
ファンによる暗殺コース!?!?
あかん、あたし…享年16歳…。
「あれ、そういえば日曜って5日…。
夏夜の誕生日じゃないの!?」
教室に戻ろうと前を歩いていた夏夜が、
ぎくりと肩を震わせた…。
「…なぁんで気づいちゃうんですかね、
魅香さん…曜日で指定したのに…。」
回り込んで蛍の顔を覗き込むと、
珍しく頬を赤らめる彼の姿。
「わぁ、かぁいい~」
あたしはにやにやしながら揶揄う。
「みーるぅーなぁー!!」
蛍はあたしの頬をぐにぃっと摘まむ。
「いひゃいぃ~ごぇんぅ~!!」
「ん”ッ…顔っ…やばっ…ぶははっ!!」
ちぇ、爆笑する蛍を尻目に頬を撫でた。