無名ファイル1
改札を出ると初めて目にする街並み…。
スマホを確認しながら歩きだす。
「あたし月乃魅香。一年…夏夜君も?」
「はい、その…本当にすみません。」
夏夜君は同い年だって分かっても敬語。
真面目なんだなぁ…礼儀正しい人。
「ってか、敬語やめよ!同い年じゃん!
時間も全然余裕だし、大丈夫だって!」
あたしは彼の背中をバシバシたたいて、
豪快に笑い飛ばしてやった。
「そっかぁ、同じクラスだといいねー!」
あたしの言葉にそうだなと頷く彼。
「噂では…成績で分けてるらしいぞ。」
そして意地悪くニヤリと笑った…。
あたしはその笑顔が意味するモノを
理解すると噛みつくように反論する。
「あたし意外とやればできる子よッ!?
受験は全力で勉強したんだからっ!!!」
真面目は撤回!初対面で失礼な奴だな!!
美形じゃなかったらグーパンだったよ!?
「ふはっ、ごめんごめん笑」
「っんにゃ''///」
あたしの頭をわしゃわしゃ雑に撫でて、
機嫌を取ろうとする夏夜君…。
撫でる手つきは優しげで温かくて、
なんだかどぎまぎしてしまう。
結局不覚にも絆されてしまった…。