無名ファイル1

改札を出ると初めて目にする街並み…。

スマホを確認しながら歩きだす。

「あたし月乃魅香。一年…夏夜君も?」

「はい、その…本当にすみません。」

夏夜君は同い年だって分かっても敬語。

真面目なんだなぁ…礼儀正しい人。

「ってか、敬語やめよ!同い年じゃん!
時間も全然余裕だし、大丈夫だって!」

あたしは彼の背中をバシバシたたいて、

豪快に笑い飛ばしてやった。

「そっかぁ、同じクラスだといいねー!」

あたしの言葉にそうだなと頷く彼。

「噂では…成績で分けてるらしいぞ。」

そして意地悪くニヤリと笑った…。

あたしはその笑顔が意味するモノを

理解すると噛みつくように反論する。

「あたし意外とやればできる子よッ!?
受験は全力で勉強したんだからっ!!!」

真面目は撤回!初対面で失礼な奴だな!!

美形じゃなかったらグーパンだったよ!?

「ふはっ、ごめんごめん笑」

「っんにゃ''///」

あたしの頭をわしゃわしゃ雑に撫でて、

機嫌を取ろうとする夏夜君…。

撫でる手つきは優しげで温かくて、

なんだかどぎまぎしてしまう。

結局不覚にも絆されてしまった…。
< 6 / 200 >

この作品をシェア

pagetop