無名ファイル1

「わぁっ!!うさっちとうさたん!!
可愛い…この子達ベッドサイドに、
置いたら映画の完全再現じゃん!!」

二つのぬいぐるみを抱き締めて、

蛍に見て見て!!と笑って見せる。

「そうだな、連れて帰るか?」

まるで小さい子供を相手にするような、

優しい声色に我に返る…落ち着かねば。

「うーん、あたしには幸せにできない。
自信ないもん…だからやめとく…」

蛍は少し残念そうに笑った。

「それ抱えて帰る魅香…絶対可愛い。」

「何か言った?」

「いーや、何も。あっちも見よう。」

蛍はあたしの視線から逃れる様に、

アクセサリー売り場の方へ向かう。

「…指輪あるかな。」

映画のラストで渡された指輪…。

兎の目がダイヤモンドなのだ。

「あった!!!」

…わぁ、値段によっては購入も、

考えようと思ってたけど…うぅ…。

「…魅香によく似合いそうだな。」

指も細くて綺麗だもんなと微笑む蛍。

あ…しかもペアリングだったわ。

「魅香が着けてるの見たい。」

「あたしはあんたとは違って、
ただの高校生で日々金欠なのだよ!」

すると蛍がさっさと店員を呼ぶ。

「…え?」
< 69 / 200 >

この作品をシェア

pagetop