無名ファイル1
校舎の入り口前でチャイムが鳴り響く。
「待て、今…チャイム鳴ったか?
悪い、月乃…俺、職員室行くから…。」
まーた申し訳なさそうな顔をして!
「大丈夫だって!いってらっしゃい。」
夏夜君は眼鏡をクイッとあげて深呼吸。
一足先に校舎へ入っていった。
あたしは彼の背中を手を振って見送る。
急に懐かしい思い出とリンクして、
あたしは手を振るのをやめた。
風が簪の三日月を揺らす…。
「はぁ…クラス、知ってる人いるかなぁ」
クラス分けの掲示を見て密かに息を呑む。
あの子もこの学校にいるんだね…。
「ふぅん、一組ねぇ…?」
あたしは靴を替え、階段を駆け上った。
教室につくともう人に溢れていた。
残す空席はあたしの隣の席だけ…か。
チャイムが鳴って数分、担任がくる。
いかにも体育教師って感じの人。
「月乃!!初日からなんだその髪!!」
うっせぇ~…ガタイ良いけどチビだな。
うん!命名:チビゴリラ先生!!
「えぇ~、これは地毛ですぅ~」
そういえば髪色の事言われたの初めて。
そんなこと考えつつ、体育館へ向かう。
隣の席はHRが終わっても空席だった。