無名ファイル1
洗面所の前で髪飾りと指輪を見て、
頬が緩む…鏡の向こうに映る間抜け顔。
「こんなだらしない顔…初めて見た。」
毎朝、鏡の前に立つと険しい表情か、
スイッチの入った笑みしか目にしない。
自分ってこんな顔出来るんだ…と驚愕。
あたしはさっとシャワーを浴び、
バスルームを後にした…。
「おまたせ、お風呂いいよー!!」
あたしが髪を拭きつつ声をかけると、
蛍は机に突っ伏してウトウトしていた。
「蛍、背中痛めるよ…シャワー浴びて、
早く寝よう?ほら服とタオル持って!」
「…んー。」
うーん…おぼつかない足取り…大丈夫か?
彼は案外どこでも寝られる性質みたい。
…というか、疲れてるんだろうな。
芸能活動忙しいみたいだし。
「そういえば電車でも寝てたなぁ…」
まだ二ヶ月くらいしか経っていないのに、
もう入学式が懐かしく思える。
メイクを落としながら思いを馳せた。
「先に寝てても良かったんだ…ぞ??」
欠伸をしながらお風呂を出てきた蛍が、
目を見開く…あ、スッピン見せるの初だ。
「…うわ…超可愛い…。」
「………はわっ…」
…彼の赤面が伝染した。