無名ファイル1

そういえば、ベッド一つだったな…。

いざ、さぁ寝ようかとなってようやく、

男女二人きりのお泊まりという現状を、

改めて実感する。

やばー、割とガチで緊張するな。

「…寝る?疲れたもん…ねー」

「いや、仕事の確認がある。
部屋にはずっといるつもりだが、
夜中に取って喰おうとはしない。」

安心して寝るといいと微笑むが、

心配してるのそこじゃないんだけど。

さっきだってウトウトしてた癖に。

「仕事してる所…見ていい?」

「…なんで。」

…机に突っ伏して寝落ちは体に悪いし。

それに普通に見てみたいと思った。

「蛍がベッドで寝るのを確認したい」

「…お前は警戒心が足りない。」

ベッドに腰かけるあたしの肩を指先で、

グッと押す…ほらすぐに倒れた…と、

彼はクスリと笑った。

「…警戒されたいの?」

あたしの言葉に眉を顰める蛍。

お前は何も分かってないと言い放つ。

「睡眠大事、ほら隣ごろんってして?」

「…そうか。」

蛍は少し引きつった笑顔を浮かべる。

覚悟はできてるんだな、と唇を舐めた。

仕舞ったと思った時には…既に遅い。

視線に射抜かれた。
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