無名ファイル1

「準備できたか?」

私は髪飾りと指輪を確認して頷く。

蛍は私の様子を見て嬉しそうに笑った。

チェックアウトの手続きを終えると、

二人はホテルを後にした…。

「学校…間に合うかなぁ?」

運転が再開した電車に揺られ、

ポツリと呟く…蛍はうーんと唸った。

「…三時限目の途中参加か?」

二人で登校したら…変かなぁ。

でも一人で登校は勇気無いから、

蛍と一緒じゃないと無理だけど。

今日からノーメイクで学校へ行く。

あたしはメイク好きだけど、私は違う。

偽りすぎた自分はもういない…。

鏡の前で理想を創る必要はない。

「あ、着いた…じゃあまた後で!」

「あぁ。」

改札を出て一本道を走り抜ける…。

優しく、温かい風が頬を撫でる。

月乃魅香は私であたし…。

どちらも否定したら可哀想だよね。

だって…月乃魅香は月乃魅香だから!

「たっだいまー!!」

誰もいない家に私の元気な声が響く。

制服を着て、短いスカートが踊る。

お団子を結い直して後れ毛を巻いて、

コーム型の簪を挿し込んだ。

「完璧っ!!いってきまーす!!」

首もとのネックレスが揺れた…。
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