無名ファイル1
『野苺学園、入学式を始めます。』
『代表挨拶、夏夜君。』
「はい。」
えっ、えええッ!?!?
代表挨拶って学年主席ってこと!?
そりゃ…人の学歴いじりも出来るわ!
夏夜君がマイクの前に立つと、
周りの生徒がざわつく…特に女子。
『待って、ホタル君じゃない!?』って。
有名なのかな。まぁ、美形だもんね。
うん、わかる…王子様みたいだよね。
いや、でもさぁ…。
いつまでも静まりそうにない声の波。
夏夜君は居心地悪そうに俯く。
その瞬間何かがあたしの中で切れた。
「静粛に。」
体育館に冷たく硬い声が響く。
空気は凍り、場は静まり返る。
仕舞ったと思った時にはもう遅かった。
周りはあたしを冷たく凝視する。
はっ!?…やっ、ちまったぁ!!
「…ふっ」
夏夜君は少しの間呆気にとられたが、
強張っていた表情は微笑に変わっていた。
その表情があまりにも美しくて、
あたしはただ、彼に釘付けになった。
「では挨拶をさせて頂きます。」
その後、入学式は滞りなく進んだ。
周囲に変人と認識されたあたしを除いて。
「久しぶり、さっきは勇敢だったわね。」