無名ファイル1
『キーンコーンカーンコーン』
二時限目の終わりを告げるチャイム。
教室に入ると麗菜とエミリアが、
こちらに気づいてあっ!と声をあげた。
「おはよう、随分満喫したようね。」
麗菜が私を見るなり茶化す。
とーっても羨ましいわーお土産は?と。
「お、おはよう、ちゃんとあるよ!
だから小突くのはお止めになって!!」
騒ぐ私たちに対してエミリアは静か…。
心配になって恐る恐る声をかけると、
バッと顔をあげ、ある方向を見つめた。
「ズルいデース…。ワタクシより、
先にデートにこぎつけるとは。
あの男…非常に憎いデース…!!」
視線の先は人だかり…中心に蛍がいる。
彼はこちらに気づいてフッと笑った。
めっちゃ格好良い…死人の出る微笑み。
あ、そうか…これがファンサなのか。
そんな二人にムキーッと怒るエミリア。
「どうどう、落ち着きなさい。
野郎よりあなたの方が魅力的よ。」
麗菜がぽむぽむエミリアの頭を撫でた。
「改めて…おかえりなさい、魅香。
あなたらしさが帰ってきた気がするわ。」
メイクじゃなくて…雰囲気がって。
私は一言”ただいま”と言って微笑んだ。