無名ファイル1
『月乃ちゃん、衣装なんだけどー!』
「あー、はいはい!採寸する?」
体育祭の一件とノーメイク効果で、
クラスメイトとすぐに馴染んだ。
入学当初は元ヤン疑惑があったこと、
私は最近知ったよ…あはは。
『わー!月乃ちゃんほそーい!!』
『あ、胸でかいね…ちょい潰そっか。』
つ、潰す!?私は密かに息を呑む…。
「黒崎、書き直せ。」
今まで台本に目を通していた蛍が、
台本を麗菜に突き返した。
「は?嫌だけど?」
ピリッと空気が締まる。
「ちょっと二人共…どうしたの?」
私が間に割って入ると両サイドから、
ギロッと睨まれる…え、こっわ…。
「麗菜やめるデース!野郎との喧嘩は、
麗菜の価値を下げるだけデース!!」
…言い方!!火に油注いでるから!!
「あの歌は実らない恋が題材だ。
お前の主観で雑に完結するな。」
その言葉に慌てて台本に目を通す。
確かに彼のソロ曲では気持ちを伝えず、
後悔する報われない切ない結末…。
台本では、その後再会しキスを交わす。
幸せな結末が描かれていた。
「あなたの恋は実ったじゃない。」
麗菜が冷めた笑みを浮かべた。