無名ファイル1
「再会したでしょう?月光の歌姫に。」
麗菜が今までに見たことの無い笑顔で、
蛍に詰め寄る。目が少しも笑ってない。
「これを期に奇跡の再会を果たす、
新曲でも出したら?祝福されるかも。」
蛍は冷たい視線で麗菜を見下ろした。
「麗菜?どうしたの…急に」
「魅香は黙ってて。」
私は麗菜に触れかけた手を引っ込める。
「私なりに凄く考えて想像して、
何時間もかけて完成させた台本を、
ザッと目を通して一言、書き直せ?
侮辱にも程があるんじゃない!?」
麗菜の鋭い声が教室を貫く…。
教室は重たい空気と静寂に包まれる。
「二人共!!落ち着くデース。
夏夜クンは意見があるなら明確に。
麗菜は冷静に聞き入れるべきデース。
良い舞台をつくろうという気持ちは、
みんな同じ。醜い言葉は不必要デス!
ほーら、仲直りするデース!!」
エミリアの優しい声が冷たい教室に、
じんわりと溶けてゆく…。
「はぁ…自分の心に余裕がなくて、
あなたに八つ当たりしてしまったわ…。
話は聞くべきよね…ごめんなさい。」
台本を握りしめ、俯く麗菜…。
その瞳には涙が滲んでいるのが見えた。
「麗菜…」