御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
ぶつかったのはその追いかけていた男性だった。ジンジンする鼻の頭を擦り、上から降ってきた低い声にハッと顔を上げる。遠目ではわからなかったけれど、百八十以上はある高身長で、細身だと思っていた身体も意外と肩幅が広くて驚いた。
「さっきから僕の後つけてきてるよね? なにか用?」
狐のような釣り目で見下ろされて、しかも後をつけていたこともバレていた。「おトイレを探してまして~」なんて笑って誤魔化せそうにもない。
だったら本当のことを言うまでよ! 私は見たんだから!
ゴクッと喉を鳴らして拳に力を入れる。相手に怯んでいることが知られれば、そこにつけこまれる。
「財布、返してくれませんか?」
凛とした声を張ると、男性は驚いたように目を丸くした。
「は? 財布? いったい何のこと?」
はいはい、最初はね、誰だってそうとぼけた振りするんですよ。でも、動画という証拠がある限り、弱みを握っているのはこっちなんだから。
だから大丈夫。と自分に言い聞かせて言葉を考える。
「あの、失礼ですけど……パーティーに参加されてるってことはちゃんと参加資格がある方なんですよね?」
「そうだけど?」
「だったらどうして財布なんて盗んだりするんですか?」
ここは感情的にならず落ち着いて……。と思いつつも、男性の飄々とした態度にイライラが募ってくる。
「さっきから僕の後つけてきてるよね? なにか用?」
狐のような釣り目で見下ろされて、しかも後をつけていたこともバレていた。「おトイレを探してまして~」なんて笑って誤魔化せそうにもない。
だったら本当のことを言うまでよ! 私は見たんだから!
ゴクッと喉を鳴らして拳に力を入れる。相手に怯んでいることが知られれば、そこにつけこまれる。
「財布、返してくれませんか?」
凛とした声を張ると、男性は驚いたように目を丸くした。
「は? 財布? いったい何のこと?」
はいはい、最初はね、誰だってそうとぼけた振りするんですよ。でも、動画という証拠がある限り、弱みを握っているのはこっちなんだから。
だから大丈夫。と自分に言い聞かせて言葉を考える。
「あの、失礼ですけど……パーティーに参加されてるってことはちゃんと参加資格がある方なんですよね?」
「そうだけど?」
「だったらどうして財布なんて盗んだりするんですか?」
ここは感情的にならず落ち着いて……。と思いつつも、男性の飄々とした態度にイライラが募ってくる。