御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
何段くらいの階段から落ちたのか思い出せないけれど、身体の傷みを考えたら相当長い階段を転げ落ちたのだろう。

あぁ、私のドジ。あと一歩のところだったのに。

すると、蓮さんがしゅんとする私の手を握った。

「まずはどうか謝らせて欲しい。あんなトラブルに巻き込んでしまって、本当に申し訳なかった」

手の甲が蓮さんの額に押しつけられるとじわっと温もりが伝わってドキリとする。

「あの、どうして蓮さんが謝るんですか? 勝手なことをしたのは私のほうです。パーティーで財布を盗んでいる男の人を見かけて……つい見て見ぬ振りができなくて後を追いかけて行ったんです」

慌てて蓮さんの謝罪を否定すると、彼は「そういうことだったのか」とはぁ、とため息をついた。

「あのパーティーは年に数回開催されるベリーヒルズビレッジの住人向けのものなんだ。実は最近盗難が頻繁に起こっていると聞いて、警察と連携して俺も参加者に紛れて会場へ潜り込んでいたんだが……」

潜り込んでいた? じゃあ、蓮さんは最初から参加者じゃなかったってこと?

蓮さんって、一体何者……?
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