御曹司とのかりそめ婚約事情～一夜を共にしたら、溺愛が加速しました～

付き合うとかそういうことも吹っ飛ばしていきなり「結婚してくれないか？」と言われても、当然信じられるはずがない。きっと蓮さんの悪い冗談だ。

「あはは……結婚だなんて、でも、こういうシチュエーションでプロポーズされたら素敵だな、って思いますけど――」

乾いた笑いを顔に張りつけたまま言葉を失う。なぜなら、蓮さんは真摯な顔で「嘘でも、冗談でもない」とじっと私を見据えていたからだ。

「これでも本気のつもりなんだが……」

蓮さんはそのまま遠慮なしに私の身体を引き寄せて両腕で抱きしめた。

「あ、あの……んっ」

驚いて顔を上げたと同時に、唇が柔らかなものに覆われる。唇を舌先で舐められ、喉の奥が鳴った。

――え……？　えっ？

状況が飲み込めずにいると不意にキスが離れ、至近距離で見つめられた。たった数秒の掠めるようなキスだったけれど、時が止まり思考もショートした。お互いの鼻先ぶつかって、長いまつ毛に縁どられた蓮さんの目が細められる。

「君をどうしても手に入れたい」