御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「あ、あのっ」

この書類に書かれていることは嘘です! デタラメです!

そう言おうと口を開きかけたそのとき、私の言葉を遮るように手元のスマホが鳴った。

「どうぞお出になってください。蓮様からでしょう?」

見ると、緒方さんが言う通りその着信は蓮さんからだった。

「あなたの口から蓮様に婚約破棄するようお伝えください」

「え……? な、なんでそんな――」

こ、婚約……破棄?

その単語がガンガンと頭に響いて真っ白になる。なにも考えられず、全身の動きがストップした私に緒方さんがさらに続けた。

「もう会うこともできないから関わらないで欲しい。と」

着信音が私の焦燥感を煽り、蓮さんに婚約者がいるというショックが入り混じって、電話に出ることができないでいると緒方さんがため息をついた。
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