御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
愛する人を意に反して自分から拒絶してしまった。その悲しみや苦しみは、きっとこの人にはわからない。とにかく今はひとりになりたくてそう訴えるけれど、緒方さんは無常にも首を横に振った。

「おそらく、直接あなたに会って話をするため、しばらくしたら蓮様がここへやって来るでしょう。ですから高杉様にはここを離れて頂きます」

「え……? 離れるって」

「ちょうど荷物もおまとめになられているようですし、好都合ですね」

慰めるわけでもなく淡々として、満面の笑みを浮かべた緒方さんに寒気を感じ、私は抵抗する間もなくアパートを離れざる得なくなった――。
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