御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
元々、ベリーヒルズビレッジに住みたいなんて夢を抱いていたし、今、自分の置かれている状況は考えによっては一応ベリヒル族になるのかな?なんて、馬鹿なことを考えてしまうほど、私は精神的に参っていた。

蓮さん、会いたいよ。

蓮さんと幸せになりたかった……。

改めて考えて見ると私が有栖川家に嫁ぐなんて夢のまた夢の話だったのだ。下界の人間が雲の上のような人と所詮一緒になれるわけがなかったんだ。と夢から覚めてみると身がちぎれそうなくらいの虚しさに襲われた。なにもない真っ白な空間にひとり閉じ込められたみたいに。

「蓮さん……」

寒いわけでもないのに鳥肌が立つ両腕を掻き抱いて、しんと静まり返った部屋で私はひとりめそめそと泣くことしかできなかった――。
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