御曹司とのかりそめ婚約事情~一夜を共にしたら、溺愛が加速しました~
「わっ! 春海ちゃん、どうしたのその目!? 真っ赤じゃない」
昨夜は一睡もできず、ずっと泣きはらしていたらいつの間にか夜が明けて、仕事に行く時間ぴったりに有栖川家の運転手さんが迎えに来た。その運転手さんも緒方さん同様、まるで能面のように表情がなく、私も話す気にもなれなくて、挨拶とひとことふたこと言葉を交わしただけだった。
これから毎日こんな生活を続けなければならないなんて、耐えられるのかな。
「いえ、何でもないんです……すみません、こんな顔で」
メイクでも誤魔化しきれないくらいの腫れぼったい瞼で、今朝は食欲もなくてなにも口にしていない。そのせいかなんだか吐き気を感じる。それに、きっと顔色も悪いに違いない。
そんな最悪な顔で出社すると、案の定、絵里さんが驚いて声をかけてきた。
「何でもないって感じじゃなさそうね……何かあったの? 話せそうなら聞くわよ?」
絵里さんが眉尻を下げて心配そうに私の顔を覗き込む。そんなふうに優しくされたらまた涙腺が緩みそうだ。
「近所にブタクサがいっぱい生えてて、私アレルギーなんですよ、もう痒くて痒くて目もショボショボなんです」
無理に笑うと、頬の筋肉が引きつっているのがわる。不自然な笑顔に絵里さんが怪訝な表情を浮かべた。
昨夜は一睡もできず、ずっと泣きはらしていたらいつの間にか夜が明けて、仕事に行く時間ぴったりに有栖川家の運転手さんが迎えに来た。その運転手さんも緒方さん同様、まるで能面のように表情がなく、私も話す気にもなれなくて、挨拶とひとことふたこと言葉を交わしただけだった。
これから毎日こんな生活を続けなければならないなんて、耐えられるのかな。
「いえ、何でもないんです……すみません、こんな顔で」
メイクでも誤魔化しきれないくらいの腫れぼったい瞼で、今朝は食欲もなくてなにも口にしていない。そのせいかなんだか吐き気を感じる。それに、きっと顔色も悪いに違いない。
そんな最悪な顔で出社すると、案の定、絵里さんが驚いて声をかけてきた。
「何でもないって感じじゃなさそうね……何かあったの? 話せそうなら聞くわよ?」
絵里さんが眉尻を下げて心配そうに私の顔を覗き込む。そんなふうに優しくされたらまた涙腺が緩みそうだ。
「近所にブタクサがいっぱい生えてて、私アレルギーなんですよ、もう痒くて痒くて目もショボショボなんです」
無理に笑うと、頬の筋肉が引きつっているのがわる。不自然な笑顔に絵里さんが怪訝な表情を浮かべた。